日本で暮らす外国人が支払う「在留手数料」が、2026年10月1日から大幅に引き上げられます。
特に大きな変更となるのが永住許可です。
現在1万円の手数料が、なんと20万円へ。単純に比較すると20倍になります。
在留資格の変更や在留期間の更新についても、現在の窓口申請6,000円から、許可される在留期間によって最大7万5,000円へと引き上げられます。
「20倍」という数字を見ると、非常に高額になったように感じます。
しかし海外に目を向けると、永住・定住に相当する手続きに数十万円かかる国も珍しくありません。イギリスでは、日本の20万円を大きく上回ります。
では今回の値上げは、本当に「高すぎる」のでしょうか。
外国人本人への影響だけでなく、外国人材を受け入れる企業、日本の人手不足、そして海外との人材獲得競争という視点から考えてみます。
- 外国人の在留手数料はどれくらい値上げされる?
- 永住許可は1万円から20万円へ
- なぜ外国人の在留手数料をこれほど引き上げるのか
- 日本の永住許可20万円は高すぎる?海外と比較してみる
- 「20倍」と「20万円」は分けて考える必要がある
- 在留手数料の大幅値上げで外国人には何が起こる?
- 永住許可20万円が「高い壁」になる可能性も
- 外国人を雇用する企業にも影響する?
- 介護・建設・外食など人手不足業界への影響は?
- 「外国人材を必要とする日本」と矛盾しないのか
- 日本が「働く国」として選ばれにくくなる可能性は?
- 一方で「受益者負担」という考え方も
- 問題は「20万円」より「一気に20倍」なのかもしれない
- まとめ|在留手数料値上げは外国人だけの問題ではない
外国人の在留手数料はどれくらい値上げされる?
今回の改定で大きく変わるのが、在留資格の変更や在留期間更新の料金体系です。
現在は窓口で手続きする場合、原則として一律6,000円ですが、2026年10月1日以降は許可される在留期間によって金額が変わります。
窓口申請の場合は次のようになります。
現在:6,000円
3か月以下:1万円
1年:3万3,000円
3年以上5年未満:6万4,000円
5年以上:7万5,000円
つまり5年以上の在留期間が認められた場合、現在の6,000円から7万5,000円となり、12倍以上です。
オンライン申請では一部について窓口申請より安く設定され、5年以上の場合は6万5,000円となります。
なお、2026年10月1日より前に申請した場合は、許可が10月1日以降になったとしても現在の料金が適用されるとされています。
永住許可は1万円から20万円へ
さらに大きな変更となるのが永住許可です。
現在の永住許可手数料は1万円ですが、2026年10月からは20万円になります。
実に20倍です。
永住許可を取得すると、一般的な在留資格のように定期的に在留期間を更新する必要がなくなります。
日本で長期間生活しようとする外国人にとって大きなメリットがある制度ですが、それでも一度の手続きに20万円となれば、決して小さな負担ではありません。
特に家族で日本に生活基盤を築いている外国人にとっては、大きな出費となる可能性があります。
なぜ外国人の在留手数料をこれほど引き上げるのか
背景にあるのが、日本で暮らす外国人の増加です。
外国人が増えれば、在留資格の審査や出入国管理だけでなく、日本語教育や生活支援など、外国人との共生に関する行政サービスにも費用が必要になります。
こうした費用について、税金だけで賄うのではなく、在留する外国人にも一定の負担を求めるという考え方があります。
いわゆる「受益者負担」です。
また、今回突然手数料が上がるわけではありません。
在留資格の変更・更新手数料は、2025年4月にも窓口申請で4,000円から6,000円へ引き上げられています。
外国人から見れば、短期間に相次いで手数料が上昇することになります。
日本の永住許可20万円は高すぎる?海外と比較してみる
「1万円から20万円」と聞けば、非常に高額になったように感じます。
では海外では、永住権やそれに相当する資格を取得するためにどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
代表的な国と比較してみます。
国|永住・定住に相当する主な制度|主な申請費用 日本円換算
日本|永住許可| 20万円(2026年10月~)
アメリカ|永住権への資格変更(I-485)|1,440ドル 約21万円
イギリス|無期限滞在許可(ILR)|3,226ポンド 約64万円
カナダ|経済移民などの永住申請|1,590カナダドル程度~ 約17万円
オーストラリア|技能系など|数千豪ドル規模 数十万円
※各国で永住制度や申請条件、料金体系が異なるため、単純な比較はできません。また健康診断、証明書、生体認証、専門家への依頼費用などが別途必要になる場合があります。
この比較を見るとむしろ日本が安すぎたのではないかと感じます。日本への移住は他国よりハードルが低いと中国で「潤日」という言葉が出てくるのも頷けます。
関連記事:
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イギリスは日本よりはるかに高い
特に高額なのがイギリスです。
イギリスの「Indefinite Leave to Remain(ILR)」は、一定の条件を満たした外国人が期間の制限なく滞在できる制度で、日本の永住許可に比較的近い制度です。
2026年の申請手数料は1人3,226ポンド。
為替によって変動しますが、日本円にすると60万円を超える水準になります。
しかもこれは1人あたりです。
家族で申請すれば人数分の料金が必要になるケースもあり、負担はさらに大きくなります。
アメリカも日本の20万円に近い水準
アメリカでは、国内から永住権(グリーンカード)への資格変更を申請する際に使用される「I-485」の一般的な申請料金が1,440ドルとなっています。
為替次第ではありますが、日本円に換算すると20万円前後の水準です。
つまり、日本の永住許可が20万円になったとしても、アメリカと比較すると極端に高額とは言い切れません。
もちろん、アメリカの永住権制度と日本の永住許可制度は仕組みが異なるため、金額だけを単純比較することはできません。
それでも「海外では永住権取得の行政手続きにどの程度の費用がかかっているのか」を考える一つの目安にはなります。
カナダでも永住申請に10万円を超える費用がかかる
移民を積極的に受け入れてきたことで知られるカナダでも、永住申請は無料ではありません。
2026年4月には永住関連手数料が引き上げられました。
たとえば連邦高度技能労働者や州推薦プログラムなどでは、主申請者の処理手数料が990カナダドル。
さらに「永住権取得料」に相当する600カナダドルが加わり、合計1,590カナダドルとなります。
日本円では為替によって変動しますが、10万円を超える規模です。
カナダ政府は永住関連手数料を定期的に見直しており、制度運営費やインフレなども考慮されています。
オーストラリアではさらに高額になるケースも
オーストラリアも、外国人の移住にかかる費用が比較的高い国です。
ただしオーストラリアの場合はビザの種類によって料金が大きく異なるため、日本の永住許可20万円と単純に比較することはできません。
技能系のビザなどでは数千豪ドル規模になるものがあり、さらに家族分の料金、健康診断、警察証明などが必要になる場合もあります。
つまり海外を見ると、外国人が長期的な在留資格や永住権を取得するために「数十万円規模」の費用を負担すること自体は珍しいものではありません。
「20倍」と「20万円」は分けて考える必要がある
ここで重要なのが、「値上げ率」と「値上げ後の金額」を分けて考えることです。
日本の永住許可手数料が、
1万円 → 20万円
となるのは、確かに20倍という非常に大きな値上げです。
これまで1万円で申請できた人からすれば、突然19万円も負担が増えるわけですから、衝撃が大きいのは当然でしょう。
一方、「永住許可に20万円かかる」という絶対額だけを海外と比較すると、見え方は変わります。
アメリカは20万円前後に相当する申請料がかかり、イギリスでは60万円を超える水準です。
そのため、
「20倍だから世界的に見ても異常に高い」
とは必ずしもいえません。
今回の改定を考える際には、「20倍という急激な引き上げが妥当なのか」と「20万円という料金自体が国際的に高いのか」を分けて考える必要がありそうです。
在留手数料の大幅値上げで外国人には何が起こる?
最も直接的な影響を受けるのは、もちろん日本で暮らしている外国人です。
特に在留資格の更新が必要な外国人の場合、一度限りの出費ではありません。
これまで6,000円だった更新手数料が数万円になるため、更新のたびに家計への負担が発生します。
さらに家族で日本に暮らしている場合、それぞれに在留手続きが必要になるケースがあります。
一人では数万円でも、家族全体ではかなりの金額になる可能性があります。
永住許可20万円が「高い壁」になる可能性も
永住許可については、さらに影響が大きいでしょう。
これまで1万円だったため、申請条件を満たした人にとって、手数料そのものが極端に大きな障壁になるケースは限られていました。
しかし20万円となれば事情が変わります。
特に収入がそれほど高くない外国人にとっては、申請時期を遅らせる理由になる可能性があります。
一方で永住許可を取得すれば、原則として在留期間の更新が不要になります。
今後、通常の在留資格を何度も更新する費用と20万円の永住許可手数料を比較し、「長く日本に住むのであれば永住許可を取得した方がよい」と判断する人も出てくるでしょう。
外国人を雇用する企業にも影響する?
今回の値上げを「外国人個人だけの問題」と考えることもできません。
外国人材を受け入れている企業や施設のなかには、在留手続きに必要な費用や関連する支援費用を事業者側が負担しているケースがあります。
そうした企業にとって、在留手数料の値上げは外国人材を受け入れるコスト増につながります。
一人あたりでは数万円の増加でも、数十人、数百人規模で外国人を雇用する企業であれば負担額は大きくなります。
介護・建設・外食など人手不足業界への影響は?
特に注目されるのが、外国人材が重要な担い手になっている業界です。
介護、建設、外食、宿泊、農業、製造業などでは、人手不足を背景に外国人労働者の受け入れが進んでいます。
こうした業界には中小企業も多くあります。
在留手続きに関連する費用を企業側が負担している場合、外国人一人を採用・雇用し続けるためのコストが増えることになります。
人手不足だから外国人を採用したい。
しかし外国人を採用・雇用するためのコストは上がる。
このジレンマが今後問題になる可能性があります。
「外国人材を必要とする日本」と矛盾しないのか
日本では少子高齢化によって労働人口が減少しています。
そのため外国人材の受け入れは、すでに一部の産業では欠かせないものになりつつあります。
一方で、外国人が日本で暮らし続けるために必要な在留手続きの費用は大幅に上がります。
「外国人材を必要としているのに、外国人が日本に住むコストを高くして大丈夫なのか」
という疑問が出るのも自然でしょう。
ただし海外比較を見ると、日本だけが外国人に高額な在留・永住関連費用を求めているわけでもありません。
重要なのは手数料だけではなく、賃金、社会保障、住宅、教育、言語、働きやすさなどを含めた総合的な環境でしょう。
日本が「働く国」として選ばれにくくなる可能性は?
外国人労働者にとって、働く国の選択肢は日本だけではありません。
人材の国際的な獲得競争が進めば、日本と韓国、台湾、欧米、オーストラリアなどの条件を比較して移住先を選ぶ人も増えていくでしょう。
その際に重要なのは、手数料だけではありません。
「日本で働いたらどのくらい稼げるのか」
「生活費はいくらかかるのか」
「家族と暮らしやすいのか」
「長期間安心して生活できるのか」
といった総合的な条件です。
在留手数料の値上げだけを理由に外国人が日本を避けるようになる、と断定することはできません。
しかし賃金など他の条件で日本の魅力が相対的に低下するなか、在留コストまで上昇すれば、人材獲得競争に影響する可能性はあります。
一方で「受益者負担」という考え方も
今回の値上げについては、外国人の負担増という側面だけでなく、「誰が行政コストを負担するのか」という視点も必要です。
外国人の出入国・在留管理には行政コストがかかります。
さらに外国人住民が増えれば、日本語教育や生活支援など共生社会を実現するための取り組みも必要になります。
そのすべてを日本の納税者が負担するのではなく、制度を利用する外国人にも一定の負担を求めるべきだというのが「受益者負担」の考え方です。
実際、カナダなど海外でも移民関連制度の運営コストを考慮して手数料を設定・改定しています。
その意味では、在留手数料を引き上げること自体が国際的に特殊な政策というわけではありません。
問題は「20万円」より「一気に20倍」なのかもしれない
海外との比較から見えてくるのは、少し意外な事実です。
日本の永住許可20万円という金額だけを見ると、世界的に突出して高額とはいえません。
むしろイギリスなど、日本よりはるかに高い国もあります。
一方で、日本ではこれまで1万円だったものが一気に20万円になります。
外国人にとって大きな問題になるのは、「世界と比べて20万円が高いか安いか」ということ以上に、これまで想定していた費用が短期間で大きく変わることかもしれません。
制度の運営コストを利用者にも負担してもらうことと、日本で長く暮らそうとする外国人に過度な負担を与えないこと。
この二つをどう両立するかが問われることになります。
まとめ|在留手数料値上げは外国人だけの問題ではない
2026年10月1日から、外国人の在留資格変更・更新にかかる手数料は、現在の窓口申請一律6,000円から最大7万5,000円へ引き上げられます。
そして永住許可は1万円から20万円へ。実に20倍です。
数字だけを見れば非常に大きな値上げですが、海外を見ると、永住・定住に相当する手続きに数十万円規模の費用がかかる国はあります。
そのため「日本の20万円だけが異常に高い」と単純に結論づけることはできません。
一方で、これまで1万円だったものを一気に20万円にする影響は別問題です。
外国人本人の負担はもちろん、外国人を雇用する企業、人手不足が深刻な業界、そして日本の国際的な人材獲得競争にも影響する可能性があります。
外国人との共生に必要な費用を誰がどこまで負担するのか。
そして外国人材を必要とする日本が、「長く住み、働きたい国」としての魅力をどう維持するのか。
今回の大幅な在留手数料引き上げは、単なる行政手続きの値上げではなく、日本の外国人政策そのものを考えるきっかけになりそうです。



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