8月11日は国民の祝日「山の日」です。
「海の日があるから山の日もあるのだろう」と何となく理解していても、
「なぜ8月11日なの?」
「8月11日に山に関係する出来事があったの?」
「いつから祝日になったの?」
と聞かれると、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
実は、山の日は最初から8月11日に決まっていたわけではありません。
制定に向けた議論の中では「8月12日」が有力候補となり、一度はこの日を候補日とする案が発表されています。
ところが8月12日は、1985年に日本航空123便墜落事故が発生した日でした。
520人が犠牲となった事故の日を「山の日」という祝日にすることに異論が出たことから日付が再検討され、最終的に現在の8月11日となったのです。
今回は、山の日がなぜ8月11日なのか、本当は8月12日になる可能性があった理由、そして日航機墜落事故との関係についてわかりやすく解説します。
山の日はなぜ8月11日なのか?
現在の祝日法では、8月11日を「山の日」と定めています。
その趣旨は、
「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」
というものです。
日本は国土の多くを山地が占める国です。
山は登山や観光の場所というだけではありません。
森林は水を蓄え、川を育み、木材などの資源をもたらします。私たちの暮らしは昔から山と深く結びついてきました。
そうした山の恩恵について改めて考える日として誕生したのが「山の日」です。
ただし、ここで一つ不思議な点があります。
なぜ「8月11日」なのでしょうか。
例えば、文化の日の11月3日や建国記念の日の2月11日のように、歴史的な背景から日付が決まっている祝日もあります。
しかし山の日の場合、「8月11日に日本の山に関係する歴史的な出来事があったから」という理由でこの日になったわけではありません。
その答えを知るには、山の日が制定されるまでの経緯を見る必要があります。
山の日は2016年に始まった比較的新しい祝日
山の日は、昔から存在していた祝日ではありません。
2014年に祝日法が改正され、2016年から施行されました。
つまり、現在ある国民の祝日の中では最も新しく設けられた祝日です。
山の日制定を求める動きには、日本山岳会をはじめとする山岳関係者や自然保護団体、地方自治体などが関わっていました。
そして2013年には、超党派の国会議員による「山の日制定議員連盟」が設立され、具体的な日付についての検討が進められます。
候補になったのは8月だけではありませんでした。
6月上旬や「海の日」の翌日、お盆前など、さまざまな案が検討されています。
その中から有力になったのが「8月12日」でした。
実は「8月12日」が山の日の有力候補だった
2013年10月30日、山の日制定議員連盟は「8月12日」を候補日とする案を発表しました。
なぜ8月12日だったのでしょうか。
大きな理由の一つが、お盆との関係です。
8月13日から16日前後は、多くの企業や学校などでお盆休みとなります。
その直前となる8月12日を祝日にすれば、お盆休みと連続させやすくなります。
新しく祝日を増やす場合、経済活動への影響も考えなければなりません。
もともと休暇を取る人が多い時期に祝日を設ければ、社会への影響を比較的小さくできるという考え方もありました。
こうして「お盆前の8月12日」が山の日の有力候補となったのです。
ところが、この日付には非常に大きな問題がありました。
なぜ8月12日ではなく8月11日になった?
8月12日は、日本の航空史上忘れることのできない日です。
1985年8月12日、羽田空港から大阪・伊丹空港へ向かっていた日本航空123便が群馬県上野村の山中に墜落しました。
乗員乗客524人のうち520人が亡くなるという大惨事となりました。
しかも事故現場は群馬県の山中です。
山の日を8月12日にすると、「山に親しみ、山の恩恵に感謝する祝日」と、多くの犠牲者を追悼する日が同じ日になってしまいます。
そのため、8月12日を山の日とする案に対して、群馬県側などから異論が出ました。
環境省がまとめた第1回「山の日」記念全国大会の資料にも、その経緯が残されています。
2013年10月30日に「8月12日」が候補日として発表された後、11月7日には、群馬県上野村長らから「日航機墜落事故の日である」という理由で異論が出たことを受けて再検討。
そして11月22日、議員連盟は「8月11日」を候補日とすることで了承しました。
つまり現在の8月11日は、単に語呂合わせなどで選ばれた日ではありません。
8月12日という当初の有力候補を避け、その前日の8月11日に変更されたという経緯があるのです。
8月12日は今も日航123便事故を追悼する日
1985年の日航123便墜落事故から長い年月が経過しましたが、8月12日は現在も事故を忘れないための重要な日です。
事故現場となった群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」では、遺族などによる慰霊登山が続けられてきました。
事故によって亡くなった520人を追悼するとともに、航空安全について改めて考える日でもあります。
そう考えると、山の日の日付を8月12日から変更した理由も理解しやすいでしょう。
もし8月12日が山の日になっていたら、毎年この日は「山に親しむ祝日」であると同時に「520人が犠牲となった航空事故の日」という、まったく異なる意味を持つことになります。
さらに事故現場そのものが山中であることを考えれば、「山の日」という名称との組み合わせに違和感を抱く人がいたことも不思議ではありません。
最終的に前日の8月11日とされたのは、こうした事情への配慮だったといえます。
では8月11日そのものに特別な意味はある?
ここまで読むと、
「それなら8月11日には山に関係する何か特別な意味があるの?」
と思うかもしれません。
しかし、8月11日という日付そのものが、歴史上の有名な登山や山岳行事に由来しているわけではありません。
山の日制定までの経緯を見ると、
「山に関係する出来事が8月11日にあったから決まった」
というより、
「お盆前の8月12日が候補だったものの、日航123便墜落事故の日と重なるため前日の8月11日に変更された」
と考える方が実態に近いでしょう。
この点は、山の日について意外と知られていない部分です。
「8」と「11」の形が山に見えるなど、日付に関するさまざまな説を見かけることがありますが、少なくとも制定までの公式な経緯を見る限り、それが8月11日に決まった主要な理由ではありません。
「海の日があるなら山の日も」制定運動が広がった
そもそも、なぜ新しく「山の日」を作る必要があったのでしょうか。
日本にはすでに「海の日」があります。
一方、日本は世界的に見ても山が多く、森林と深い関係を持つ国です。
海の恩恵に感謝する祝日があるのなら、山の恩恵について考える日があってもいいのではないか。
そうした考えから、山岳関係者などを中心に国民の祝日としての「山の日」を求める運動が広がっていきました。
各地には国の祝日ができる以前から、独自の「山の日」を設けていた自治体もあります。
こうした活動が全国的な運動へ発展し、国会での法改正へとつながりました。
2014年に成立した改正祝日法では、8月11日を山の日とし、その趣旨を「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」と定めました。
そして2016年、初めて8月11日が国民の祝日「山の日」となったのです。
山の日が移動した年もある
現在は「山の日=8月11日」と定着していますが、実は別の日になった年もあります。
東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う特例措置により、2020年は8月10日、2021年は8月8日に山の日が移動しました。
特に2021年は東京オリンピックの閉会式に合わせて8月8日に移され、翌9日は振替休日となりました。
ただし、これはあくまで特例です。
通常の山の日は8月11日であり、2026年も8月11日が山の日となっています。
山の日は「登山をする日」だけではない
「山の日」と聞くと、登山やハイキングをする人のための祝日という印象を持つかもしれません。
しかし祝日法の趣旨を見ると、必ずしも山に登ることを求めているわけではありません。
重要なのは、
「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」
ことです。
森林が水を蓄え、川を通して海へとつながっていること。
山が多くの動植物の生息地になっていること。
木材や食料など、私たちの暮らしにさまざまな恵みをもたらしていること。
普段あまり意識することのない山と生活との関係について考えるだけでも、山の日の意味はあります。
必ずしも登山靴を履いて山頂を目指す必要はないのです。
まとめ|8月11日の裏には「8月12日を避けた」歴史がある
山の日がなぜ8月11日なのか。
その背景をたどると、単なる語呂合わせや山にまつわる記念日ではないことがわかります。
山の日制定に向けた議論では、お盆休みとつなげやすいことなどから8月12日が有力候補となりました。
しかし8月12日は、1985年に日本航空123便墜落事故が発生し、520人が犠牲となった日です。
事故現場となった群馬県側などから異論が出たことを受けて日付が再検討され、最終的に前日の8月11日となりました。
2014年に法律が成立し、2016年から始まった山の日。
今では当たり前のようにカレンダーに書かれている「8月11日」という日付にも、実はこうした経緯が隠されています。
山の日は、山の恵みに感謝する日。
そして翌日の8月12日は、日本の航空史に残る大事故を忘れず、犠牲となった人々を追悼し、空の安全について考える日でもあります。
隣り合った二つの日付の背景を知ると、8月11日が山の日になった意味も少し違って見えてくるのではないでしょうか。



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