「今年はやけに台風が多いな」と感じている人も多いのではないでしょうか。
2026年8月28日、ウェーク島近海で台風23号「バンラン」が発生しました。
このニュースを聞いてさすがに最近頻度が多すぎないかと疑問に思いました。
これで8月に発生した台風は10個。1か月に10個の台風が発生するのは1966年8月以来、実に60年ぶりで、1951年の統計開始以降でも最多タイとなります。
しかも、2026年はまだ8月です。
気象庁によると、年間の台風発生数の平年値は25.1個。それに対して今年は8月28日の時点ですでに23号まで発生しています。
一方、最近の台風を見ていると、数だけでなく「進路」にも違和感を覚える人がいるかもしれません。
以前の日本に接近する台風といえば、南の海上から沖縄や鹿児島方面へ進み、九州付近から北東方向へカーブして本州方面へ向かう――そんな進路をイメージする人も多いでしょう。
ところが最近は、日本のかなり東側を北上したり、複雑な動きをしたり、時には通常とは逆方向へ進んだりする台風も目立ちます。
2026年は本当に台風が多いのでしょうか。
そして、「昔と台風の進路が違う」という感覚には理由があるのでしょうか。
今年の異例の発生ペースとともに、台風の進路を決める仕組み、地球温暖化との関係について見ていきます。
2026年は本当に台風が多い?8月ですでに23号
結論からいえば、2026年は少なくとも8月までの段階では、かなり速いペースで台風が発生しています。
8月28日に発生した台風23号は、23号としては1951年の統計開始以降2番目に早い発生となりました。
8月末までに23号まで発生するのも、統計上わずか2回目です。
さらに今年は1月から8月まで毎月台風が発生しています。
1月から8月まで8か月連続で台風が発生したのは、1951年以降では1965年、2015年、そして2026年の3回しかありません。
「今年は台風が多い気がする」という感覚は、少なくとも今年ここまでの発生ペースを見る限り、間違いではなさそうです。
8月だけで10個の台風発生は60年ぶり
特に異例なのが2026年8月です。
気象庁が算出している1991~2020年の平年値では、8月の台風発生数は5.7個。
ところが2026年8月は、台風23号の発生によって10個となりました。
つまり、平年の約1.8倍です。
1か月に10個の台風が発生するのは1966年8月以来60年ぶり。1951年以降で月10個以上となったケース自体、2026年8月を含めてわずか3回しかありません。
今年がかなり珍しい年であることが分かります。
【台風発生数の比較】
年間の台風発生数(平年) :25.1個
8月の台風発生数(平年) :5.7個
2026年8月の発生数 :10個
2026年1~8月 :23個
日本への年間接近数(平年):11.7個
日本への年間上陸数(平年):3.0個
ただし、ここで注意したいのが「発生数」と「日本に来る台風の数」は同じではないことです。
年間25.1個というのは北西太平洋や南シナ海で発生する台風の数であり、そのすべてが日本へやって来るわけではありません。
平年では年間25.1個が発生するのに対し、日本へ接近するのは11.7個、上陸するのは3.0個です。
そのため「23号まで発生した=23個もの台風が日本に来た」という意味ではありません。
なぜ2026年はこれほど台風が多いのか
では、なぜ今年はこれほどハイペースで台風が発生しているのでしょうか。
台風が発生するには、暖かい海だけでなく、海面から大量の水蒸気が供給されること、大気の状態、上空と下層の風の状態など、さまざまな条件が必要になります。
そのため「今年は暑いから」「海水温が高いから」という一つの理由だけで、台風の発生数を説明することはできません。
実際、日本気象協会は2026年7月末の段階ですでに、今年の台風発生数が平年を上回るペースになっていると指摘していました。
8月については独自予測で4~7個程度の発生を予想していましたが、実際にはそれを上回る10個に達しました。
台風が発生しやすい大気・海洋の条件が今年は繰り返し整った結果と考えるのが適切でしょう。
「最近は台風が多い」と感じるのは報道の変化も関係?
「今年は実際に発生数が多い。しかし、昔より台風を知る機会が増えたことも『最近は台風ばかり』と感じる一因かもしれない」
昔は日本に影響しそうな台風しか報道されてなかったように思うのですが、どうでしょうか?
その為台風の号数をあまり連番で考えたこともなかったような気がします。
特に今回の23号はその象徴です。日本への直接的影響がほぼないウェーク島近海の台風なのに、多くの人が「23号が発生した」とその日のうちに知っている。 数十年前とは情報環境がかなり違います。
「最近の台風は昔と進路が違う」と感じるのはなぜ?
そして、もう一つ気になるのが台風の進路です。
昔の台風といえば、
「南の海上から北西へ進む」
↓
「沖縄や鹿児島方面へ」
↓
「九州や四国付近で進路を変える」
↓
「本州付近を北東へ進む」
という大きなカーブを描く進路を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
これは単なる記憶違いではありません。
気象庁が公開している「台風の月別の主な経路」を見ても、特に9月になると南の海上から北西方向へ進んだ後、日本付近で進路を北東へ変える「放物線型」の経路が典型的になります。
過去に甚大な被害をもたらした室戸台風や伊勢湾台風なども、9月にこうした経路を取った台風でした。
では、なぜ最近は違う進路の台風が目につくのでしょうか。
そもそも台風は自分で進んでいるわけではない
台風の進路を理解するうえで重要なのが、
「台風は自分の力だけで好きな方向へ進んでいるわけではない」
ということです。
台風そのものは巨大な渦ですが、その渦全体が周囲の大気の流れによって運ばれています。
そこで大きな役割を果たすのが、
「太平洋高気圧」と「偏西風」です。
日本の夏によく聞く太平洋高気圧は、台風の進路にも大きな影響を与えています。
太平洋高気圧の位置が変われば台風の「道」も変わる

台風は太平洋高気圧の縁を進む
夏から秋にかけて、日本の南から東の海上には太平洋高気圧が大きく張り出します。
台風は基本的に、この高気圧の内部へ真っすぐ進むことが難しいため、その周辺を回り込むように進みます。
そのため、
太平洋高気圧の南側を西へ
↓
高気圧の西側を北上
↓
日本付近へ
↓
北東方向へ
という進路になりやすいのです。
言い換えれば、太平洋高気圧は台風にとって巨大な「壁」のような存在です。
ところが、その壁はいつも同じ場所にあるわけではありません。
太平洋高気圧が西へ大きく張り出していれば台風も西側へ押しやられやすくなります。
反対に張り出しが弱かったり東寄りだったりすれば、日本列島のかなり東側を北上することもあります。
太平洋高気圧の位置や強さが変われば、台風が通る「道」も変わるわけです。
台風を東へ運ぶ「偏西風」
もう一つ重要なのが偏西風です。
偏西風は夏よりも冬に流れが速くなります。
筆者は航空会社で勤務していた経験から、冬場はどうかすると予定到着時間より30分も早くなり、慌てて到着ゲートに向かってた記憶があります。(日本より西方から到着する便の話です)
南から北上してきた台風が日本付近で突然右へ曲がったように見えることがあります。
これを「転向」と呼びます。
北上した台風が中緯度まで来ると、今度は西から東へ吹いている偏西風の影響を強く受けるようになります。
すると、それまで北西方向へ進んでいた台風が北東方向へ進み始めます。
これが「沖縄・九州方面から日本列島に沿うように北東へ」という、昔からよく知られた台風コースができる大きな理由です。
偏西風の位置や蛇行の仕方が違えば、台風が東へ曲がり始める場所も変わります。
つまり台風の進路は、
「台風そのもの」だけを見ても分からないのです。
太平洋高気圧や偏西風など、周囲の大気全体を見る必要があります。
8月の台風はもともと「迷走」しやすい
ここで注意したいのが、複雑な進路を取る台風は最近になって突然現れたわけではないということです。
実は8月は、昔から台風が「迷走」しやすい季節です。
気象庁によると、8月は台風を流す上空の風がまだ弱いため、台風が不安定な経路を取りやすいとされています。
一方、9月になると偏西風などの影響を受けやすくなり、南の海上から日本付近へ向かい、その後北東へ抜ける放物線型の進路が増えてきます。
そのため8月には、
・急に進路を変える
・動きが極端に遅くなる
・通常とは違う方向へ進む
・複雑な経路を描く
といった台風が昔から存在しています。
「最近の台風は変な動きをする」と感じても、そのすべてを異常気象や地球温暖化で説明することはできません。
最近、本当に台風の進路は変わっているのか?
では、「昔と台風の進路が違う」という感覚は単なる気のせいなのでしょうか。
ここは慎重に考える必要があります。
気象庁の「日本の気候変動2025」によると、1951年以降の台風発生数や日本への接近数について、明確な長期的変化傾向は確認されていません。
一方で興味深い研究結果もあります。
最近40年間(1980~2019年)について日本の太平洋側へ接近する台風を調べた研究では、後半20年間の東京への接近数が前半20年間のおよそ1.5倍になったとされています。
また、北西太平洋の熱帯低気圧については、「強度が最大になる位置」が北へ移動している可能性が非常に高いとも評価されています。
つまり現時点では、
「日本に来る台風の進路が一斉に変わった」
とまでは言えません。
しかし、台風を取り巻く環境に変化が見られることも確かです。
私たちが「以前と何か違う」と感じる背景には、こうした変化が一部関係している可能性もあります。
地球温暖化で台風の数は増えているのか?
ここで多くの人が考えるのが地球温暖化との関係でしょう。
海水温が上昇しているのであれば、
「海が暖かくなったから台風も増えているのでは?」
と思いたくなります。
しかし、現時点の科学的知見では、それほど単純ではありません。
気象庁によると、1951年以降の台風発生数には長期的な増加傾向は確認されていません。
2025年も年間27個で、平年の25.1個と比べてほぼ平年並みでした。
つまり2026年の発生ペースが非常に速いからといって、
「温暖化によって毎年台風が増え続けている」
とは言えないのです。
問題は「台風の数」より「強さ」になる可能性
一方、地球温暖化と台風について別の変化が懸念されています。
それが「強度」です。
気象庁と文部科学省がまとめた「日本の気候変動2025」では、将来、世界全体の熱帯低気圧の総数については減少するか、ほとんど変わらないと予測されています。
その一方で、
「強い熱帯低気圧の割合は増える」
と予測されています。
さらに日本付近では、台風の強度が強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測されています。
つまり将来的に重要なのは、
「台風が何個発生したか」
だけではなく、
「どれほど強い状態で日本付近へやって来るのか」
なのかもしれません。
台風の数が増えなくても、一つ一つの台風がより強い風や大量の雨をもたらすようになれば、災害リスクは大きくなります。
「台風は沖縄・九州を通って東へ」という常識だけでは見られない時代に
これまで日本人にとって台風の典型的なイメージは、
「南から沖縄・九州方面へ北上し、その後東へカーブする」
というものだったかもしれません。
実際、それは現在でも代表的な台風経路の一つです。
しかし台風の道を決めている太平洋高気圧や偏西風は毎年同じ位置にあるわけではありません。
発生する場所も違います。
複数の台風が同時に存在すれば、互いの循環によって進路に影響を与える「藤原の効果」が起きることもあります。
今回の台風23号も、近くを進む台風22号との間で藤原の効果が働き、22号の東側を回り込むような動きが予想されています。
台風の進路が複雑に見えるのには、それぞれ理由があるのです。
「いつもの台風ならこのコースだろう」
という経験則だけで判断するのではなく、一つ一つの台風について最新の予報を見ることが、これまで以上に重要になっていると言えるでしょう。
まとめ|2026年は確かに台風が多い ただし「温暖化で増えた」とは言い切れない
2026年は8月28日の時点ですでに台風23号まで発生しました。
特に8月は10個。
平年の5.7個を大きく上回り、1か月10個という数字は1966年以来60年ぶりの最多タイです。
「今年は台風が多い」と感じるのは当然でしょう。
一方、長期的な統計を見ると、1951年以降の台風発生数そのものに明確な増加傾向は確認されていません。
また、昔よく見られた「沖縄・九州方面から北上して東へカーブ」という経路もなくなったわけではありません。
台風は太平洋高気圧の縁を進み、北上すると偏西風によって東へ運ばれます。
その太平洋高気圧や偏西風の位置・強さが変われば、当然ながら台風の道も変わります。
そして8月は、そもそも台風を動かす上空の風が弱く、複雑な進路になりやすい季節でもあります。
ただし、地球温暖化が進む将来については「台風の数」よりも「強さ」への影響が懸念されています。
日本付近の台風はより強くなり、台風による雨量も増えると予測されています。
2026年の異例の発生ペースを見ても、単に「今年は23個も発生した」と数だけを見るのではなく、
「どこで発生するのか」
「どのような経路を通るのか」
「どれほど発達するのか」
まで見ることが、これからの台風を理解するうえで重要になりそうです。



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